8月31日、昨年から幾度と無く噂に登っていたmixi版Facebookページ、mixiページがリリースされました。開始初日で開設数は3万ページを超えたと言われており、業界での注目を集めています。
米国では、Facebookページは企業の7割が開設していると言われており、マーケティングの重要な施策と位置付けられていますが、日本国内におけるmixiページのビジネス活用はどのような形になるのでしょうか。まだまだ機能も少なく、パブリックβ版という様子のmixiページですが、現時点で考えられる典型的なフレームを考えてみました。
mixiページは、mixi内に企業や有名人、ブランドがオウンド(自社所有の)メディアを立ち上げる機能です。Facebookが提供するFacebookページに似ていますが、国内会員数が470万程度(最新の数値はこちら)のFacebookに対して、1400万のmixiユーザーが対象となる点が最大の売りとなっています。
■前提
mixiページってなんだっけ?という方はmixi公式ページとナナピの解説ページを見ておけば大丈夫です。FacebookやTwitterとの違いは同僚の岡村健右がブログ記事でまとめてくれています(8月31日時点の内容です)。
■基本導線
自社ビジネスにmixiページを活用するのための基本導線は以下のようになるのではないかと思います。
上図では細かい点を色々省略していますが、一番右にある「アクション」に自分たちが達成すべきビジネスのゴールを設定します。次に、mixiページを経由してビジネスのゴールへどう繋げるか、「自分たちなりの絵」を書くことが第一歩ではないかと思います。今回は「認知獲得」「エンゲージ(ここでは「交流」のような意味合いでご理解いただければと思います)」「アクション」の3つのプロセスに分けていますが、様々な顧客接点とソーシャルサービス、スポットの施策を統合すると実際はもっと複雑になります。また、単に導線を繋げるだけでなく、それぞれのプロセスで顧客(利用者、ファン)にとってのバリューを明確に定義することが必要です。mixiページの利用はマーケティングポートフォリオの中にあるオンライン施策の、更に一部分に過ぎないと思いますので、背景となる全体戦略と整合性を取りながら進めます。
◯オンラインの認知経路
導線を作る上で、まず最初に考えなければいけないのはどこで自分たちが運営するmixiページの存在を知ってもらうかということです。mixiページは、mixiのサイト内からの導線がないため、外部のサイトなどから人を集めてくる必要があります。簡単に思いつくものを以下の表にまとめました。
ソーシャルメディア系のビジネスを運営している企業やクライアントに聞いてみたところでは、まだお金を出してmixiページの広告を出稿しているところは少ないようです。mixiページはまだ始まったばかりということもあり、費用対効果がある程度見きれるまでは自社メディアやメルマガでの告知など、低コストな手法が主な手段になると思います。無印良品ではmixiページオープン初日にTwitterで告知していました。無印良品mixiページのファン数は9月21日時点で5000名弱ですが、Twitterアカウントのフォロワーは12万人以上いますので、Twitterからの流入はそれなりの比率を占めているのではないかと思います。ちなみに27万人のファンを抱える無印良品Facebookページでの告知はありませんでした。
ソーシャルサービスのビジネス活用というとCVRやCPAばかり追いかけてしまいがちですが、日頃からファンとの関係を温めておくと新しい施策の着火点として非常に低コストで活用できます。また、ファンの中核がないコミュニティ構築初期においては、ペイド広告でロイヤリティの低いユーザーをランディングさせるよりも、ある程度自社製品・サービス・ブランドに興味や知識があるユーザーを集めた方がその後の活性化の面でも有効でしょう。
オンラインでの認知経路は上記以外にも色々な方法があると思います。例えば、mixiの関連コミュニティ内にポストしたり、自社製品のレビュアーに個別にオファーしたり、といったトリッキーな手法も考えられます。今挙げた例ではコンテキストの把握、オファー対象の選定、内容に応じたインセンティブがKSFになりますが、まずは自社の得意なチャネルから検討していくとよいのではないかと思います。また、mixiページはGoogleなどの検索サイトにヒットするので、閲覧数が増えてくれば検索サイトからの流入も見込めます。
■例:Googleでの「ループス mixiページ」の検索結果
http://www.google.co.jp/search?sourceid=chrome&ie=UTF-8&q=%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%B9%E3%80%80mixi%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
オンラインで認知を獲得する際のKPIはインプレッション数、CTR、CVR、CPF(Cost per fan)などが考えられます。mixiページは今のところ解析機能が弱く、流入経路の分析はほぼできません。このあたりがきちんと測定できるようになり、最適化の目処がたつまでは大規模な投資は避け、地道な手法で集客するのがよいのではないかと思います。
◯オフラインでの集客
もちろんオフラインからの流入も期待できます。週末見かけたキャサリンハムネットの店舗では、こんなFacebookページのキャンペーンをやっていました。
QRコードを読み込んでファンになり、店員に携帯の画面を見せると10%OFF、というシンプルなものです。効果のほどはわかりませんが、mixiページの利用においても、このように実店舗で告知をすることは可能です。ただし、mixiページはファンになる(mixiの用語定義では「フォロー数」)ことに対してインセンティブを与えてはならない(金銭的価値の有無に関わらず、何らかの見返りを与えてはいけない)となっているため、上記の例と同じ事をやってしまうと規約違反になります。
その他、新聞やテレビでの広告など、あらゆる手段が利用できます。前述の通り費用対効果の目処が立つまではペイド広告の利用は最小限にした方がよいと思われます。ただし、雑誌広告を出す際に ちょっと紹介してもらう、というように、他のキャンペーンコストに混ぜ込めるのであれば積極的に利用したいです。
参考までに、Facebookページの認知経路についてはこんな調査結果も出ています(PR会社の調査なので、その点はお含みおきください)。
PR TIMESが実施したFacebookユーザーへの調査によると、Facebookユーザーの約半数(49.8%)が「インターネットニュース・ブログ・Twitter」のいずれかで企業(ブランド)のファンページが開設されたことを認知することが明らかになりました。加えて、2人に1人が「無料を含むお得なプロモーション情報を受け取る」ことを動機として、企業(ブランド)ファンページのファンになるという実態が明らかになりました。
■エンゲージ
ユーザーがmixiページの存在を認知し、ランディングした後はそのページを「フォロー」してもらうことが重要です。ユーザーにmixiページをフォローしてもらってはじめて、ユーザーのマイページに自分たちが発信した情報が表示されるようになります。メンバー(フォローしているユーザー)と非メンバー(フォローしていないユーザー)向けのデフォルト表示ページをそれぞれ設定できるので、非メンバー向けにはページの内容やメンバーになることの魅力を訴求するような内容を設定しておくとよいでしょう。設定はmixiページ管理画面から「メニュー追加・変更→初期表示メニューの設定」から行けます。
先ほども触れましたが、mixiページの参加や、参加後の投稿に対してインセンティブを与える行為は禁止されています。Facebookでよく見る、「ファンになったら割引」「ファンになったらプレゼント」などの行為は規約違反になるため気を付けたいです。
調査会社やモニターによって差はありますが、日米のFacebookページ利用者を対象とした調査では「お得情報」や「クーポン・割引」等、実利を得られることが利用のインセンティブの大きな割合を占めているようです(国内PR TIMESの調査では約5割)。そのような実利提供が禁止されているmixiページでは、「愛着」や「興味」といった情緒的要素がより重要になる一方、コストをかけてページへ誘導する際のCPA、CPFは高くなることが予想されます。Facebookページの運用に慣れている企業でも、このあたりの特徴を見極めた上で計画を立てることが肝要です。
◯運用
FacebookやTwitterと同じように、mixiページにおいてもユーザーとつながりを持ったらそれで終わりではなく、自分たちの製品・サービス・ブランドなどをより魅力的に感じてもらうための様々な活動を行なっていきます(運用フェーズについては書きだすときりがないので、このエントリでは詳細を割愛します)。ただ、mixiページの特徴として定量データが取りづらいという点は考慮しておいた方がよいでしょう。mixiページにはFacebook Insightにあたる解析ツールがない他、Page APIを使っても①いいね数、②フィード、③コメント、3種類のデータしか取得できません(9月21日現在)。このあたりについては今後の改善が期待されますが、現時点では定量的な指標に注目したモニタリングにこだわるよりも、目視でざっくりとユーザーの反応や好みといった傾向を把握する方が時間の節約と精神安定のためにはよいと思います。
■アクション
mixiページやソーシャルサービスの活用に限らず、企業活動としてなんらかの投資を行うのであれば直接的・間接的の差はあるにせよ、①売り上げの増加、②コストの削減、③顧客満足度の向上、のいずれかに貢献する必要があるでしょう(ループスが重視している「顧客満足度」ですが、その測定指標として用いられるNPSは収益性や売上などと相関性を持つ指標として有効であるといわれています)。
以下に、ソーシャル系施策をKGIと紐付ける際の考え方と、mixiページのビジネス活用でそこを重視すべきかを、主観に基づいてまとめました。
◯ビジネスマターとの紐付け例
- 「売り上げ貢献」との紐付け
- コミュニティで実施した需要喚起施策の効果
- 測定例:トラフィック流入数、CTR、CVR、CPAなど
- mixiページでも外部リンクのクリックを計測することで測定可能。
URL短縮サービスやリンク先でのアクセス解析と組み合わせる。
- コミュニティ経由で獲得した新規顧客のLTV
- 測定例:推奨者の関与による新規顧客(口コミ人数×態度変容率) × (LTV + アクイジションコスト)
- mixiページでは口コミの電波状況が測定できないため測定不可。
- コミュニティで実施した需要喚起施策の効果
- 「コスト削減」との紐付け
- 顧客サポートのコスト削減
- 測定例:コミュニティ上で解決した(と思われる)課題件数×(オペレータの時間給×課題解決にかかる時間)
- mixiページでは機能的な問題(インタラクティブなコミュニケーションに向いていない、など)があり現実的施策とは言えない。
- 既存の顧客管理システムとのコスト差分
- 測定例:メルマガ送信1件あたりのコスト×(コミュニティでの情報発信量)
CRMや自社コミュニティ構築コストとの比較も有用。 - 到達指標なのでmixiページでも実施可能。
効果指標を取るためには工夫が必要。
- 測定例:メルマガ送信1件あたりのコスト×(コミュニティでの情報発信量)
- 広告費換算でのコスト削減
- 測定例:投下コストあたりのクリック数を比較
- mixiページでも外部リンクのクリックを計測することで測定可能。
URL短縮サービスやリンク先でのアクセス解析と組み合わせる。
- 実店舗送客でのコスト削減
- 測定例:投下コストあたりの送客数を比較
- mixiページでは機能的な問題(ページ単体では位置情報系が利用できない、など) と規約(インセンティブ不可)上の制限により現実的な施策とは言えない。
- 顧客サポートのコスト削減
- 「顧客満足度」との紐付け
- 批判者から推奨者への態度変容価値の測定
- 推奨者が生み出す追加LTV−批判者によって失われるはずだったLTV
- mixiページ云々、というよりも測定や算出に必要な基礎データの領域が広すぎるためここでは論じない。
- サポート件数と離脱率との相関の分析
- ソーシャルゲームなど、離脱率を細かく測定しているビジネスではサポート件数との相関を調べる。
- mixiページでは機能的な問題(インタラクティブなコミュニケーションに向いていない、など)があり現実的施策とは言えない。
- 批判者から推奨者への態度変容価値の測定
このあたりは、業種業態によって全く測定項目が違いますので、「まあこんな感じか」程度にご覧いただければ幸いです。要は、今のところmixiページのビジネス活用は「mixiページ上からどれだけ外部(多くは自社)サイトへリンクさせたか」が主要な測定項目で、打つべき施策もそこへ繋がるものが多くなる、ということです。mixiページアプリを使ってmixiペイメントプログラムなどでマネタイズすることも考えられますが、mixiページとmixiアプリを一緒に扱うと大変なのでやめておこうと思います。また、これはあくまでも現時点で取れるデータややれることから考えられる内容です。将来的に取得できるデータや拡張機能、サードパーティアプリなどが増えれば別の使い方が見えてくるかもしれません(参考:mixiタウン構想に関するIT Media記事)。
■mixiページをビジネス活用する際の注意点
まだまだ私もmixiページの運用経験は少ないのですが、注意したい点、気がついた点を挙げておきます。
- インセンティブの制限
- ユーザーの行動(フォロー、いいね、コメントなど)にインセンティブを与えることは禁じられています。Facebookでは、Facebookページの「いいね(ファンになる)」など、一部の機能に対してはインセンティブを与えることができますが、それをもう少し厳しくした感じです。
- リンク先の対応
- 管理者がmixiページに投稿すると、PC・ガラケー・スマフォの全プラットフォームで表示されます。投稿にリンクを入れる場合などは、リンク先が携帯での表示に対応していなかったりすることもありますので注意が必要です。
- アプリ開発の手間
- mixiページでは、mixiページアプリという独自アプリを開発して機能を拡張することができます。Facebookとは違いガラケーでも使えるのが大きな強みですが、たくさんのプラットフォームに対応するとその分開発コストはかさみますので展開するプラットフォームの選定はしっかりと行う必要があるでしょう。
- マイページからの流入最適化
- mixiページがユーザーからフォローされると、ユーザーのマイページにmixiページの新着情報などが表示されるようになります。ここから、どの程度再訪問してもらえるかがmixiページ運用において重要な点になりそうです。気になった点を幾つか挙げておきます。
- 今のところ重み付けのアルゴリズムはなさそう。
あまりたくさん投稿しすぎると迷惑なページと判断され、フォロー解除されてしまうのではないか。 - 多くのページをフォローするユーザーでは流れが早くなることが予想される。
投稿タイミングを、ユーザーのPC閲覧時にしっかりと合わせることが重要になるのではないか。 - マイページからの流入が期待できないと、結局は広告に戻ることになるのではないか。
- 今のところ重み付けのアルゴリズムはなさそう。
- mixiページがユーザーからフォローされると、ユーザーのマイページにmixiページの新着情報などが表示されるようになります。ここから、どの程度再訪問してもらえるかがmixiページ運用において重要な点になりそうです。気になった点を幾つか挙げておきます。
■Facebookページとの傾向の違い
現在、いくつかのサイトでmixiページのランキングを見ることができます(Googleの検索結果)。9月21日時点では、1位の西野カナさん公式ページ(ファン数約58,000人)を筆頭に、上位10アカウントは芸能人と人気のmixiアプリで湿られています。現時点で1件も投稿がない西野カナさんのmixiページにこれほど人が集まっているのは、mixi公認アカウント制度の終了に伴い、公認ページからの移行が進んでいるためだと思われます。西野カナさんの場合、公認アカウントで55万人の友だちがいますから、1割程がmixiページへ移行していることになります。
※図:西野カナさん公認ページでのアカウント終了のお知らせ
mixiページ、Facebookページのファン数ランキング1位〜9位を比較してみるとこんな感じです。
芸能人、アーティスト、ゲームが多くエンタメ色の強いmixiページランキング(非公式サイトも多いですけど)と、企業ページが多くビジネス色の強いFacebookページランキング。傾向の違いがよくわかります。ファンの書き込みも、きっとmixiページはくだけたフレンドリーな感じで、Facebookの方がよそ行きな感じなのかなー、と思ってみてみたらそうでもありませんでした。
上記はそれぞれソナーポケットmixiページ(ファン数約1.5人)へのレス、板野友美さんFacebookページ(ファン数約1.25万人)へのレスです。いくつかのページを見比べる限り、実名・匿名の差ははっきりとした書き込みのスタンスの差に繋がっていないようです。ただ、mixiページのコメント数はFacebookページのものに比べて圧倒的に多いです。このあたりは公認mixiアカウントで培ったファンとの交流という下地があってこそのものだと思います。西野カナさんのほぼすべてのmixi日記にはいいねが最大値の1000件、コメントも最大値の500件(日記一覧。閲覧にはmixiへのログインが必要)ついています。
このような傾向の違いは、mixiとFacebookが持つ機能面の差ではなく、プラットフォームが抱えているコンテンツの差と言っていいでしょう。芸能人やエンタメ系コンテンツのビジネス活用が、mixiと密接に連携していくのか、それともマルチプラットフォーム化するのかによってユーザーの閲覧メディアは影響を受けていくと思います。例えば、ある芸能人がmixiからFacebookに移行に移行すれば、熱心なファンはFacebookの利用を始めるでしょう。Facebookに完全移行するのではなく、mixi・Facebookのマルチポストを行うのであればファンは自分が使っているSNSで引き続きコンテンツを楽しむだろうと思います。ファンにとってはプラットフォームや機能性ではなく、コンテンツこそが選定基準になると思います。SNS間で強力なコンテンツの誘致合戦が始まる可能性は、少し前のソーシャルゲームプラットフォームでの人気ブランド争いを思い出させます。個人的には、SNSはコンテンツホルダーのプラットフォーム依存度が低いので、しばらくはマルチポストが主流になるのではないかと考えています。
というわけで、情報が少ないながら色々書いてみました。リリースされたばかりで機能的にはまだまだ物足りないmixiページですが、mixiタウン構想という魅力的なビジョンの実現に向けて今後も機能が追加・改善されていくものと思います。タウン構想でもmixiペイメントプログラムの拡張が示唆されていましたが、SNSがブランド・企業・芸能人といった「コンテンツ」をどれだけ抱えるかはその後のマネタイズに大きな影響を与えるはずです。mixi・Facebook両プラットフォームの今後の動向を見る際に、開設されたブランドページの数と質に注目するのは有益だと思います。
ソーシャルプラットフォームとコンテンツという観点でmixiを見た場合、バスキュール号・トーチライトというmixiと関係の深い企業の存在が気になるところではありますが、ちょっと長くなりましたので今日はこの辺で締めさせていただきたいと思います。




















8月31日、昨年から幾度と無く噂に登っていたmixi版Facebookページ、mixiページがリリースされました。開始初日で開設数は3万ページを超えたと言われており、業界での注目を集めています。